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SOX2関連症候群(3q26欠失症候群)
概要
1. 概要
3番染色体長腕3q26領域のSOX2を含む微細欠失またはSOX2の機能喪失バリアントによるハプロ不全で生じる症候群である。無眼球症あるいは小眼球症を中核症状とするが、それ以外にも様々な臓器の合併症が見られる。
2. 原因
SOX2を含む3q26領域の微細欠失またはSOX2のハプロ不全変異で生じる。染色体欠失の切断点はさまざまである。
3. 症状
SOX2のハプロ不全により多臓器に影響が見られる。無眼球症あるいは小眼球症の他、脳形成異常、知的発達症、運動発達遅滞、筋緊張低下、てんかん、痙性あるいはジストニア、食道閉鎖、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症、下垂体低形成、成長障害、難聴などを合併しうる。自閉スペクトラム症やADHDなど、神経発達症を示すことがある。
4. 治療法
現時点で本疾患の根本的な治療法はない。無眼球症あるいは小眼球症に対しては早期に眼科コンサルトを行う。リハビリテーション、行動上の問題、内分泌に対する評価、薬物療法などを行う。
5. 予後
知的発達症やてんかんなどの重症度による。
要件の判定に必要な事項
1. 患者数
本邦での患者数は不明である。
2. 発病の機構
常染色体顕性遺伝を示すが、約60%は生殖細胞系列における新生変異で生じる。そのほか、有症状の両親からの遺伝、または無症状の父親あるいは母親の生殖細胞系列のモザイクからの症例も報告されている。同一家系内でも症状の重症度が異なる。
3. 効果的な治療方法
未確立 (対症療法のみ)
4. 長期の療養
必要 (生涯にわたり, 症例に応じたケアが必要である)
5. 診断基準
あり(研究班が作成した診断基準あり)
6. 重症度分類
以下のいずれかに該当する者を対象とする。
- 本症候群を原因とする自閉症スペクトラム障害や薬剤抵抗性てんかんに対して投薬を必要とするもの。
- modified Rankin Scale(mRS)、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上の場合。
情報提供元
「マイクロアレイ染色体検査で明らかになる染色体微細構造異常症候群を示す小児から成人のより良い診断・診療体制の構築」研究班
研究代表者 東京女子医科大学 教授 山本俊至
診断基準
Definite を対象とする。
SOX2関連症候群(3q26欠失症候群)の診断基準
A.症状
【大症状】
I. 無眼球症あるいは小眼球症(65%は両側性)
II. 脳形成異常(脳梁低形成、脳室拡大、内側側頭葉の構造異常、異所性灰白質、下垂体低形成)
*Iは必須項目。
【小症状】(合併しうる症状)
I.発達遅滞あるいは知的発達症
II. 運動発達遅滞
Ⅲ. 神経発達症(自閉スペクトラム症、ADHD)
Ⅳ. 筋緊張低下
V. てんかん
V. 痙性あるいはジストニア
VI. 食道閉鎖あるいは食道気管瘻
VIII. 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症(男性では停留精巣、小陰茎症、尿道下裂。女性では頻度は低いが子宮低形成、膣無形成、卵巣無形成)
IX. 成長障害
X. 感音性難聴
B.検査所見
本症候群に特異的な検査所見はない。
眼科的な検査で眼球の異常を認めることがある。
C.鑑別診断
以下の疾患を鑑別する。
無眼球症あるいは小眼球症の鑑別として、他の眼の発生に関わる遺伝子異常(OTX2, PAX6, BMP4, GJA8, NAA10など)あるいは染色体微細構造異常による症候群、子宮内感染(先天性サイトメガロウイルス感染症、風疹症候群など)。
D.遺伝学的検査
何らかの遺伝学的検査を実施し、SOX2遺伝子を含む3番染色体長腕 3q26 領域の欠失、もしくはSOX2の病的バリアントを認める。
<診断のカテゴリー>
Definite:Aのうち大症状のIを認め、Dの遺伝学的検査所見を満たしたもの。
Possible: Aのうちいくつかの症状を認めたもの。
<重症度分類>
以下のいずれかに該当する者を対象とする。
1)本症候群を原因とする自閉スペクトラム症や薬剤抵抗性てんかんなどに対して投薬を必要とするもの。
2)modified Rankin Scale(mRS)、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上の場合。

日本脳卒中学会版
食事・栄養 (N)
0. 症候なし。
1. 時にむせる、食事動作がぎこちないなどの症候があるが、社会生活・日常生活に支障ない。
2. 食物形態の工夫や、食事時の道具の工夫を必要とする。
3. 食事・栄養摂取に何らかの介助を要する。
4. 補助的な非経口的栄養摂取(経管栄養、中心静脈栄養など)を必要とする。
5. 全面的に非経口的栄養摂取に依存している。
呼吸 (R)
0. 症候なし。
1. 肺活量の低下などの所見はあるが、社会生活・日常生活に支障ない。
2. 呼吸障害のために軽度の息切れなどの症状がある。
3. 呼吸症状が睡眠の妨げになる、あるいは着替えなどの日常生活動作で息切れが生じる。
4. 喀痰の吸引あるいは間欠的な換気補助装置使用が必要。
5. 気管切開あるいは継続的な換気補助装置使用が必要。
●参考文献●
- Fantes J, Ragge NK, Lynch SA, et al. Mutations in SOX2 cause anophthalmia. Nat Genet. 2003;33(4):461-3.
- Bakrania P, Robinson DO, Bunyan DJ, et al. SOX2 anophthalmia syndrome: 12 new cases demonstrating broader phenotype and high frequency of large gene deletions. Br J Ophthalmol. 2007;91(11):1471-6.
- Suzuki J, Azuma N, Dateki S, et al. Mutation spectrum and phenotypic variation in nine patients with SOX2 abnormalities. J Hum Genet. 2014 59(6):353-6.
- Williamson KA, Yates TM, FitzPatrick DR. SOX2 Disorder. 2006 Feb 23 [Updated 2020
- Jul 30]. In: Adam MP, Feldman J, Mirzaa GM, et al., editors. GeneReviews®. Seattle (WA): University of Washington, Seattle; 1993-2024. Available from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK1300/