疾患概要
(研究者・医療関係者の方向け)

DeSanto-Shinawi症候群(WACを含む10p12.1欠失症候群)

概要

1. 概要 

DeSanto-Shinawi症候群は、遺伝性疾患であり、主に乳児期から精神運動発達遅滞、筋緊張低下、特徴的な顔立ち、行動異常、視覚異常などの症状が見られる。顔立ちの特徴には、四角い顔、低い鼻梁、広い額、くぼんだ目、低い位置にある耳などが挙げられる。また、個々の症状やその程度には大きな個人差が存在する。

2. 原因 

本症候群は、WAC遺伝子のヘテロ接合性病的バリアントまたはWAC遺伝子を含む10p12.1欠失により生じる。これらは多くの場合、新生突然変異として発生するが、親の生殖細胞系列モザイクが推定される家系の報告もある。

3. 症状 

DeSanto-Shinawi症候群の主な症状には以下が含まれる:

– 顔立ちの特徴: 四角い顔、広い額、くぼんだ目、低い鼻梁など。

– 筋緊張低下: 特に乳児期に見られる。

– 精神運動発達遅滞: 発話遅延、微細運動の発達遅延、歩行開始の遅れ。

– 行動の異常: 睡眠障害、不安症状、注意欠如・多動性障害(ADHD)、自閉症スペクトラム症など。

– その他: 視覚異常、胃腸の問題(便秘、胃食道逆流症など)、呼吸器異常。

4. 治療法 

本症候群には根本的な治療法が存在せず、症状に応じた対症療法が行われる。発達遅滞や行動異常に対する標準的な治療、低緊張や摂食困難への対応が含まれる。また、栄養状態の評価や発達の進行状況の定期的なモニタリングも重要である。

5. 予後 

本症候群の予後は、患者の症状の重症度により異なる。知的障害の程度は軽度から重度まで多様であるが、軽度が多く、一部の患者では正常範囲内や境界域の知能指数を示すこともある。自閉症スペクトラムやADHDも見られることがあり、全体としては、継続的な支援が必要となる場合が多い。また、行動異常が社会生活に与える影響も大きいため、長期的な療育や支援が求められる。

要件の判定に必要な事項

1. 患者数 

本邦での罹患頻度は不明である。

2. 発病の機構 

DeSanto-Shinawi症候群は、WAC遺伝子の異常またはWACを含む10p12.1の欠失が原因であり、これが発症の主なメカニズムである。生殖細胞における新生突然変異や非アリル間相同組み換えが生じることにより発症する場合が多い。

3. 効果的な治療方法 

未確立であり、根本的な治療法はない。症状に応じた対症療法が行われる。

4. 長期の療養 

必要である。生涯にわたり症状が持続するため、継続的な療養と支援が求められる。

5. 診断基準 

あり(研究班が作成した診断基準あり)

6. 重症度分類 

以下の1)~3)のいずれかに該当する者を対象とする。

1) 難治性てんかんの場合:主な抗てんかん薬2~3種類以上の単剤あるいは多剤併用で、かつ十分量で、2年以上治療しても発作が1年以上抑制されず日常生活に支障を来す状態(日本神経学会による定義)。

2) Modified Rankin Scale(mRS)、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上の場合。

3) 先天性心疾患があり、NYHA分類でII度以上に該当する場合。

情報提供元

「マイクロアレイ染色体検査で明らかになる染色体微細構造異常症候群を示す小児から成人のより良い診断・診療体制の構築」研究班

研究代表者 東京女子医科大学 教授 山本俊至

診断基準

Definiteを対象とする。

DeSanto-Shinawi症候群(WAC遺伝子を含む10p12.1欠失症候群)の診断基準

A.症状 

【大症状】 

1. 知的障害 

   – 知的障害または発達遅滞(言語、運動、社会的発達の遅れ) 

2. 低緊張 

   – 新生児期から乳児期にかけての全身性または口腔の低緊張 

3. 特徴的顔貌 

   – 軽度の顔面奇形(広いまたは低い鼻根部、四角い顔、深くくぼんだ目、幅広い顎、広い口) 

4. 神経発達症 

   – 行動異常(不安、ADHD、ASD、攻撃性、自傷行為)

【小症状】(合併しうる症状) 

1. 視覚異常 

   – 屈折異常、斜視、皮質性視覚障害など 

2. 呼吸器疾患 

   – 繰り返す感染、喘息、異常な呼吸パターン 

3. 消化器異常 

   – 胃食道逆流、便秘 

4. 中枢神経MRIの異常 

   – 脳室拡大、くも膜嚢胞などの異常所見

B.検査所見 

本症候群に特異的な検査所見はない。以下の所見を認める場合がある。

脳MRI:脳室拡大、くも膜嚢胞

上部消化管検査:胃食道逆流

C.鑑別診断 

以下の疾患を鑑別する。

プラダー・ウィリー症候群、スミス・マジェニス症候群、ピット・ホプキンス症候群、アンジェルマン症候群、KANSL1関連知的障害症候群を含むその他の染色体微細構造異常症候群

D.遺伝学的検査 

何らかの遺伝学的検査によりWACを含む染色体10p12.1領域の欠失もしくはWACの病的バリアントを認める。

<診断のカテゴリー> 

Definite:Aのうち大症状の1, 2, 3を認め、Dの遺伝学的検査所見を満たしたもの。

<重症度分類>

以下の1)~3)のいずれかに該当する者を対象とする。

1)難治性てんかんの場合。

2)modified Rankin Scale(mRS)、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上の場合。

3)先天性心疾患があり、NYHA分類でII度以上に該当する場合。

●参考文献●

  1. Varvagiannis K, de Vries BBA, Vissers LELM. WAC-Related Intellectual Disability. 2017 Nov 30. In: Adam MP, Feldman J, Mirzaa GM, et al., editors. GeneReviews® [Internet]. Seattle (WA): University of Washington, Seattle; 1993-2024. Available from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK465012/
  2. Toledo-Gotor C, García-Muro C, García-Oguiza A, Poch-Olivé ML, Ruiz-Del Prado MY, Domínguez-Garrido E. Phenotypic comparison of patients affected with DeSanto-Shinawi syndrome: Point mutations in WAC gene versus a 10p12.1 microdeletion including WAC. Mol Genet Genomic Med. 2022 May;10(5):e1910. doi: 10.1002/mgg3.1910. Epub 2022 Mar 10. PMID: 35266333; PMCID: PMC9034681.
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