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TAR症候群(RBM8Aを含む1q21.1複合ヘテロ欠失)
○概要
- 概要 橈骨欠損を伴う血小板減少症 (thrombocytopenia-absent radius:TAR) は、稀な常染色体潜性遺伝性疾患で、血小板減少と、両側性の橈骨欠損を特徴とする。
- 原因 染色体1q21.1上に存在するRBM8A遺伝子の欠失や変異によって発症する。RBM8A遺伝子のコードするY14は、RNAプロセシングに重要なエクソン接合部複合体を構成する4サブユニットの内の1つである。RBM8A遺伝子、Y14がTAR 症候群の特定の徴候や症状をどのように引き起こすかは不明である。TAR 患者に共通する欠失は、約 200kb で、約 12 の遺伝子が含まれている。
- 症状 血小板減少症は先天性の場合もあれば、生後数週間から数か月以内に発症する場合もある。血小板減少の程度によっては出生時に紫斑や点状出血が目立つこともある。先天性の橈骨欠損を認めるが、それ以外に骨格の異常(尺骨および上腕骨の変形、肋骨の異常、股関節脱臼、膝蓋骨脱臼)を合併することもある。その他の症状として牛乳不耐症、先天性心疾患 (心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、動脈管開存、ファロー四徴症) 、特異顔貌(小顎症、背が高くて広い額、低くて後方に回転した耳)、泌尿生殖器系の異常(腎臓の異常、子宮、子宮頸部、膣の上部の無形成)を認めることもある。
- 治療法 血小板減少症に対しては、必要に応じて血小板輸血を行うが、まれに幹細胞移植が必要となる場合がある。成人期まで持続する血小板減少症に関しては、脾臓摘出術が効果的な治療法である。橈骨欠損に対しては、機能を改善するために患部の副子固定、変形の外科的矯正が必要な場合がある。手術が不可能な場合は補助具などが利用されたり、理学療法と作業療法が行われる。
- 予後 血小板数が低いうちは頭蓋内出血のリスクがあり注意が必要である。しかし、血小板数は生後12か月までに自然に正常レベルに達し、患者が生後2年間生存すれば、平均余命は正常である。
○要件の判定に必要な事項
- 患者数 100人未満。本邦での発症頻度は不明。
- 発病の機構 少なくとも 2 つの連鎖していない対立遺伝子を必要とする複雑な形質である。欠失は約 25% の患者で de novo で発生している。
- 効果的な治療方法 未確立 (根本的な治療法はない。)
- 長期の療養 必要 (生涯にわたり, 症例に応じたケアが必要である。)
- 診断基準 あり(研究班が作成した診断基準あり)
- 重症度分類 特発性血小板減少性紫斑病の重症度基準に準ずる。
<診断基準>
Definiteを対象とする。
TAR症候群(RBM8Aを含む1q21.1複合ヘテロ欠失)の診断基準
A.症状
【大症状】 I. 血小板減少症 II. 橈骨欠損 【条件】 I. 末梢血液で血小板100,000/µL以下である。 II. 末梢血液で血小板の大きさは正常である。 III. 骨髄で巨核球数は減少している。 IV. X線で両側の橈骨欠損がある。
B.検査所見
上記症状より何らかの遺伝学的検査を実施し、RBM8A遺伝子の変異、あるいはRBM8A遺伝子を含む欠失による複合ヘテロを確認することにより確定される。
C.鑑別診断
以下の疾患を鑑別する。
その他の先天奇形症候群
D.遺伝学的検査
- RBM8A遺伝子の変異・欠失
<診断のカテゴリー>
Definite:A~Dの全てを認めたもの。
<重症度分類>
重症度基準で StageII 以上を対象とする。
(血小板)
| Stage | 血小板数 (×10^4/µL) | 出血症状 |
|---|---|---|
| 0 | ≧10 | なし |
| I | 5~9.9 | 軽微(*1のみ) |
| II | 1~4.9 | 中等度(*1+*2) |
| III | <1 | 重度(*3) |
*1 皮下出血:点状出血、紫斑、斑状出血
*2 粘膜出血:歯肉出血、鼻出血、下血、血尿、月経過多など
*3 重症出血:生命を脅かす危険のある脳出血や重症消化管出血など
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。
●参考文献●
- Tassano E, Gimelli S, Divizia MT, et al. Thrombocytopenia-absent radius (TAR) syndrome due to compound inheritance for a 1q21.1 microdeletion and a low-frequency noncoding RBM8A SNP: a new familial case. Mol Cytogenet. 2015;8:87. Published 2015 Nov 5. doi:10.1186/s13039-015-0188-6