疾患概要
(研究者・医療関係者の方向け)

16p13.11微細欠失/重複症候群

概要

1. 概要

 16番染色体短腕の16p13.11領域の約 1.0 Mbの欠失/重複で発症する染色体異常症候群である。重複では運動あるいは言語における発達の遅れ、行動異常、心疾患、骨の形態異常、欠失では運動あるいは言語における発達の遅れ、行動異常、小頭症などがみられる。同じ欠失/重複を有する親が無症状のこともあり、不完全浸透と考えられている。

2. 原因

 両切断端に位置する分節的繰り返し配列によって引き起こされる非アリル間相同染色体組換えによってde novoで発生、あるいは無症状の親から受け継ぐと考えられる。

3. 症状

欠失:知的能力障害、運動あるいは言語における発達の遅れ、行動障害などを示す。小頭症、多小脳回、けいれんの報告がある。顔貌は特徴的ではない。Wilm’s腫瘍の報告は1例みられるが、その他の臓器における症状の報告はない。

重複:大きく4つのカテゴリーに含まれる。

  • 骨格の形態異常(頭蓋骨早期癒合症、長頭症、多指、合指、くも状指、関節過可動性異常など)
  • 心血管系形態異常(ファロ-四徴症、大動脈縮窄を合併した完全大血管転位症)
  • 運動あるいは言語における発達の遅れ(知的能力障害を含む)
  • 神経発達症に関わる症状(ADHD、攻撃と破壊的行動、ASDなど)

4. 治療法

症状に応じた治療を要する。遺伝学的診断に基づく遺伝カウンセリングが欠かせない。

5. 予後

 知的能力障害の重症度、心疾患の重症度による。

要件の判定に必要な事項

1. 患者数

不明である。

2. 発病の機構

 非アリル間相同染色体組換が原因と想定されるが、無症状の血縁者と共有している場合があり、浸透率が低い。

3. 効果的な治療方法

 未確立 (根本的な治療法はない)

4. 長期の療養

 必要 (生涯にわたり症状が持続する)

5. 診断基準

あり(研究班が作成した診断基準あり)

6.  重症度分類

以下の1)~3)のいずれかに該当する者を対象とする。

  • 難治性てんかんの場合。
  • modified Rankin Scale(mRS)、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上の場合。
  • 先天性心疾患があり、NYHA分類でII度以上に該当する場合。

 情報提供元

「マイクロアレイ染色体検査で明らかになる染色体微細構造異常症候群を示す小児から成人の診断・診療体制の構築」研究班

研究代表者 東京女子医科大学 教授 山本俊至

診断基準

Definiteを対象とする。

16p13.11微細欠失/重複症候群の診断基準

A.症状

【大症状】

  1. 知的能力障害 (IQ70未満)
  2. 神経発達症(ASD、ADHDなど)
  3. 言語発達遅滞
  4. 特徴的顔貌 (平らな顔、深い眼球、眼裂斜下、耳介低位、軽度尖った頤で筋緊張の低下した顔貌、薄い上口唇/低く広い大きな鼻梁、上向きまたは狭い眼瞼、両眼隔離症、長いテント状の人中)

*Iは必須項目。

【小症状】(合併しうる症状)

  1. 手足の形態異常
  2. 心疾患(洞性徐脈、三尖弁逆流、2尖大動脈弁、心室中隔欠損症など)
  3. 低身長
  4. 小頭症
  5. 筋緊張低下
  6. けいれん
  7. 中耳炎

B.検査所見

上記症状よりマイクロアレイ染色体検査を含む何らかの遺伝学的検査を実施し、16番染色体短腕p13.11領域の欠失/重複を確認することにより確定される。NDE1MYH11ABCC1ABCC6などを含む16p13.11の約 1.0 Mbの欠失/重複。

C.鑑別診断

以下の疾患を鑑別する。

他の染色体微細構造異常を鑑別する。

D.遺伝学的検査

1.染色体16p13.11領域の欠失/重複

<診断のカテゴリー>

Definite:AのうちIを認め、染色体16p13.11領域の欠失/重複を認めたもの。

Possible:遺伝学的検査結果が合致しても、症状を満たさない場合。

<重症度分類>

1)~3)のいずれかに該当する者を対象とする。

  • 難治性てんかんの場合:主な抗てんかん薬2~3種類以上の単剤あるいは多剤併用で、かつ十分量で、2年以上治療しても、発作が1年以上抑制されず日常生活に支障を来す状態(日本神経学会による定義)。
  • modified Rankin Scale(mRS)、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上を対象とする。
  • 先天性心疾患があり、NYHA分類でII度以上に該当する場合。

●参考文献●

Nagamani SC, et al. (2010) Phenotypic manifestations of copy number variation in chromosome 16p13.11. Eur J Hum Genet; 19(3):280-6.

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