疾患概要
(研究者・医療関係者の方向け)

16p12.2反復微細欠失症候群

概要

1. 概要

 16番染色体短腕16p12.2領域の520-kbの欠失によっておこる染色体異常症候群である。主に運動あるいは言語における発達の遅れ、行動異常などを示す。

2. 原因

 分節的繰り返し配列が両切断点に存在するchr16:21.9-22.4 (Mb)領域の欠失が原因である。顕性遺伝で両親のうちの一方からの遺伝(母由来が多い)で発症する。ただし、欠失を有していても症状を呈さない場合もあり、浸透率が低い。

3. 症状

知的能力障害100%、言語発達遅滞100%、特徴的顔貌(広い/平らな鼻梁)、成長障害、小頭症、先天性心疾患(左心低形成など)、けいれん、行動異常56%、難聴、筋緊張低下、仙骨部皮膚陥凹、脊髄係留など。けいれんは、West症候群、熱性けいれん、けいれん様エピソードなどの報告がある。様々な臨床症状を示すが臨床症状だけで認識することは困難である。

4. 治療法

症状が多岐にわたるため各々に対応した治療が必要である。また、早期の診断、治療は予後に重要である。また、無症状な人も含めて遺伝学的診断に基づく遺伝カウンセリングが欠かせない。

5. 予後

 知的能力障害の重症度や、てんかん、心疾患の有無による。

要件の判定に必要な事項

1. 患者数

不明である。

2. 発病の機構

 非アリル間相同染色体組換が原因と想定されるが、無症状の血縁者と共有している場合があり、浸透率が低い。

3. 効果的な治療方法

 未確立 (根本的な治療法はない)

4. 長期の療養

 必要 (生涯にわたり症状が持続する)

5. 診断基準

あり(研究班が作成した診断基準あり)

6.  重症度分類

以下の1)~3)のいずれかに該当する者を対象とする。

  • 難治性てんかんの場合。
  • modified Rankin Scale(mRS)、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上の場合。
  • 先天性心疾患があり、NYHA分類でII度以上に該当する場合。

情報提供元

「マイクロアレイ染色体検査で明らかになる染色体微細構造異常症候群を示す小児から成人の診断・診療体制の構築」研究班

研究代表者 東京女子医科大学 教授 山本俊至

診断基準

Definiteを対象とする。

16p12.2反復微細欠失症候群の診断基準

A.症状

【大症状】

  1. 精神能力遅滞(IQ 70未満)
  2. 言語発達遅滞
  3. 筋緊張低下
  4. 行動異常
  5. 特徴的顔貌(広い/平らな鼻梁)

*Iは必須項目。

【小症状】(合併しうる症状)

  1. 成長障害
  2. 小頭症
  3. 先天性心疾患
  4. けいれん
  5. 難聴
  6. 仙骨部皮膚陥凹、脊髄係留

B.検査所見

上記症状よりマイクロアレイ染色体検査を含む何らかの遺伝学的検査を実施し、16番染色体短腕p12.1領域の欠失を確認することにより確定される。

C.鑑別診断

以下の疾患を鑑別する。

他の染色体微細構造異常による症候群

D.遺伝学的検査

1.染色体16p12.2領域の欠失

<診断のカテゴリー>

Definite:Aのうち大症状のいずれかを認め、染色体16p12.1領域の欠失を認めたもの。

Possible:遺伝学的検査結果が合致するが、症状を満たさない場合。

<重症度分類>

1)~3)のいずれかに該当する者を対象とする。

  • 難治性てんかんの場合:主な抗てんかん薬2~3種類以上の単剤あるいは多剤併用で、かつ十分量で、2年以上治療しても、発作が1年以上抑制されず日常生活に支障を来す状態(日本神経学会による定義)。
  • modified Rankin Scale(mRS)、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上を対象とする。
  • 先天性心疾患があり、NYHA分類でII度以上に該当する場合。

●参考文献●

  1. Girirajan S, Pizzo L, Moeschler J, Rosenfeld J. 16p12.2 Recurrent Deletion. 2015 Feb 26 [updated 2018 Sep 13]. In: Adam MP, Feldman J, Mirzaa GM, Pagon RA, Wallace SE, Amemiya A, editors. GeneReviews® [Internet]. Seattle (WA): University of Washington, Seattle; 1993–2025. PMID: 25719193.
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