疾患概要
(研究者・医療関係者の方向け)

Potocki-Lupski症候群(RAI1を含む17p11.2重複症候群)

概要

1. 概要

 染色体17p12領域の重複により引き起こされる染色体微細重複症候群である。同領域内の欠失ではSmith-Magenis症候群を生じることが知られている。患者は運動あるいは言語における発達の遅れ、知的能力障害、神経発達症、てんかん、行動障害などを示すことがある。欠失によって生じるSmith-Magenis症候群では特徴的な先天性心疾患を合併するが、Potocki-Lupski症候群では先天性心疾患の報告はほとんどない。特徴的な顔貌を示す場合もあるが、顔貌だけで診断することは難しい。

2. 原因

 17p12領域にはLCRが存在しており、non-allelic homologous recombinationによって生じる。そのため患者における染色体重複領域のサイズはほとんど共通しており、約3-Mbである。この領域にはretinoic acid induced 1遺伝子(RAI1)が位置しており、RAI1のコピー増加が原因とされている。

3. 症状

乳児期早期の筋緊張低下、体重増加不良、運動あるいは言語における発達の遅れ、知的能力障害、神経発達症、てんかんなどを示すことが多い。心臓や腎臓を含む内臓形態異常を示す場合もある。また、眼間離離や眼瞼裂斜下、内眼角贅皮などを含む、特徴的な顔貌を示すことがある。

4. 治療法

 根本的な治療法はない。内臓奇形に対しては外科的な処置が必要な場合がある。てんかんに対しては、発作型に合わせた治療が必要である。神経発達症に由来する多動や行動障害に対しては、環境調整や必要に応じた薬物療法を要することがある。 

5. 予後

 合併症によるが、一般的に生命予後が不良であるという報告はない。

要件の判定に必要な事項

1. 患者数

海外からの報告によれば25000人に1人の発生率とされているが、本邦での正確な患者数は不明である。

2. 発病の機構

 患者のほぼ全ては生殖細胞系列における突然変異によって生じると考えられている。

3. 効果的な治療方法

 未確立 (根本的な治療法はない)

4. 長期の療養

 必要 (生涯にわたり症状が持続する)

5. 診断基準

あり(研究班が作成した診断基準あり)

6.  重症度分類

以下の1)~3)のいずれかに該当する者を対象とする。

  • 難治性てんかんの場合。
  • modified Rankin Scale(mRS)、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上の場合。
  • 先天性心疾患があり、NYHA分類でII度以上に該当する場合。

情報提供元

「マイクロアレイ染色体検査で明らかになる染色体微細構造異常症候群を示す小児から成人の診断・診療体制の構築」研究班

研究代表者 東京女子医科大学 教授 山本俊至

診断基準

Definiteを対象とする。

Potocki-Lupski症候群(RAI1を含む17p11.2重複症候群)の診断基準

A.症状

【大症状】

  1. 知的能力障害(IQ70未満)
  2. 神経発達症
  3. 特徴的顔貌(眼間離離や眼瞼裂斜下、内眼角贅皮)
  4. てんかん発作(てんかん発作のタイプは様々であり、点頭てんかんを生じる場合もある。)

*Iは必須項目。

【小症状】(合併しうる症状)

  1. 心臓や腎臓を含む内臓形態異常

B.検査所見

上記症状よりマイクロアレイ染色体検査を含む何らかの遺伝学的検査を実施し、17番染色体短腕p11.2領域の重複を確認することにより確定される。ただし、重複領域にRAI1遺伝子を含んでいること。

C.鑑別診断

以下の疾患を鑑別する。

Smith-Magenis症候群

D.遺伝学的検査

1.染色体17p11.2領域の重複

<診断のカテゴリー>

Definite:Aのうち大症状のIを認め、染色体17p11.2領域の重複を認めたもの。

<重症度分類>

1)~3)のいずれかに該当する者を対象とする。

  • 難治性てんかんの場合:主な抗てんかん薬2~3種類以上の単剤あるいは多剤併用で、かつ十分量で、2年以上治療しても、発作が1年以上抑制されず日常生活に支障を来す状態(日本神経学会による定義)。
  • modified Rankin Scale(mRS)、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上を対象とする。
  • 先天性心疾患があり、NYHA分類でII度以上に該当する場合。

●参考文献●

  1. 柳下ら (2021). 日本人Potocki-Lupski症候群7症例の臨床症状. 脳と発達; 53(6):456-61.
  2. Ciaccio C et al. (2020). Neurological phenotype of Potocki-Lupski syndrome. Am J Med Genet A; 182(10):2317-24.
  3. Potocki L et al. (2007). Characterization of Potocki-Lupski syndrome (dup(17)(p11.2p11.2)) and delineation of a dosage-sensitive critical interval that can convey an autism phenotype. Am J Hum Genet; 80(4):633-49.
  4. Potocki L et al. (2000). Molecular mechanism for duplication 17p11.2: The homologous recombination reciprocal of the Smith-Magenis microdeletion. Nature Genetics; 24(1):84-7.
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