疾患概要
(研究者・医療関係者の方向け)

22q11.2重複症候群

概要

1. 概要

 22q11.2重複症候群は、22番染色体長腕11.2領域の微細重複による染色体異常症である。DiGeorge syndromeやvelocardiofacial syndromeとしても知られる22q11.2欠失症候群の相補的な重複症候群として確立された病態である。症状としては、知的能力障害、学習障害、言語発達遅滞、低身長、筋緊張低下などが知られている。高頻度で家族性の重複が報告されているが、同一家系内においてもその臨床像には多様性(家系内多様性)があり、身体的な症状や知的能力障害を認めない症例まで幅広い病像を呈する。常染色体顕性遺伝形式を呈するが、その浸透度は不完全であり、症状を認めない(気づかれない)ことも考えられ、発症頻度は不明である。

2. 原因

 染色体22q11.2の領域重複には、典型的な約3Mbまたは1.5Mbサイズが知られ、この領域にわたる低頻度反復配列(LCR22)を介した非アレル間相同組み換え(NAHR)の影響によると考えられている。最も一般的な約3Mbの領域には約40の遺伝子が含まれている。これらの遺伝子が過剰であることが関与していると考えられるが、その詳細および臨床的な多様性が生じる機序は不明である。同領域の欠失症候群の主要遺伝子とされるTBX1は機能獲得変異においても機能喪失変異または欠失によるハプロ不全と同じ表現型スペクトルを示すことが報告されており、22q11.2重複症候群についてもTBX1の過剰発現が関係している可能性が考えられている。

3. 症状

先天性心疾患、口蓋咽頭機能不全、鼻声、口蓋裂、難聴、成長障害、言語発達遅滞、知的能力障害、学習障害、神経発達症、膀胱外反症を含む泌尿器疾患、免疫異常・胸腺形成不全、側弯症など。同部位の欠失で生じる22q11.2欠失症候群と特徴を共有する。顔貌の特徴として眼間開離、平たい鼻、耳介形態異常、内眼角贅皮などを認めることがある。症状に幅があり(同一家系内おいても異なることがある)、ほとんど臨床的な特徴を認めないこともあることがわかっている。知的能力障害や学習障害についてもその程度には幅がある。

4. 治療法

 根本的な治療はなく、新生児期から長期的に各合併症・各症状について、必要な対症療法を行う。先天性心疾患、口蓋裂等については外科的治療も必要となる、外科的治療の最適な時期、リスク、術後の予後については、未だ不明である。手術や投薬といった医療的介入にとどまらず、臨床的症状(特性)に基づいた生活指導や、療育・教育的な介入も重要であると推察される。 

5. 予後

 根本的な治療方法は未確立である。生命予後は先天性心疾患などの身体合併症の重症度によると考えられる。

要件の判定に必要な事項

1. 患者数

不明。

2. 発病の機構

 生殖細胞系列における非アリル間相同染色体組み換えによって生じると考えられている。

3. 効果的な治療方法

 未確立 (根本的な治療法はない)

4. 長期の療養

 必要 (生涯にわたり症状が持続する)

5. 診断基準

あり(研究班が作成した診断基準あり)

6.  重症度分類

以下の1)~3)のいずれかに該当する者を対象とする。

  • 難治性てんかんの場合。
  • modified Rankin Scale(mRS)、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上の場合。
  • 先天性心疾患があり、NYHA分類でII度以上に該当する場合。

情報提供元

「マイクロアレイ染色体検査で明らかになる染色体微細構造異常症候群を示す小児から成人の診断・診療体制の構築」研究班

研究代表者 東京女子医科大学 教授 山本俊至

診断基準

Definiteを対象とする。

22q11.2重複症候群の診断基準

A.症状

【大症状】

  1. 知的能力障害(IQ70未満)
  2. 神経発達症
  3. 先天性心疾患

*Iは必須項目。

【小症状】(合併しうる症状)

  1. 口蓋咽頭機能不全(鼻声、口蓋裂)
  2. 難聴
  3. 成長障害
  4. 膀胱外反症を含む泌尿器疾患
  5. 免疫異常・胸腺形成不全
  6. 側弯症

B.検査所見

上記症状よりマイクロアレイ染色体検査を含む何らかの遺伝学的検査を実施し、22番染色体長腕q11.2領域の重複を確認することにより確定される。ただし、重複領域にTBX1遺伝子を含んでいること。

C.鑑別診断

以下の疾患を鑑別する。

他の染色体微細構造異常による症候群

D.遺伝学的検査

1.染色体22q11.2領域の重複

<診断のカテゴリー>

Definite:Aのうち大症状のIを認め、染色体22q11.2領域の重複を認めたもの。

<重症度分類>

1)~3)のいずれかに該当する者を対象とする。

  • 難治性てんかんの場合:主な抗てんかん薬2~3種類以上の単剤あるいは多剤併用で、かつ十分量で、2年以上治療しても、発作が1年以上抑制されず日常生活に支障を来す状態(日本神経学会による定義)。
  • modified Rankin Scale(mRS)、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上を対象とする。
  • 先天性心疾患があり、NYHA分類でII度以上に該当する場合。

●参考文献●

  1. Shimojima K, et al. (2011) Tandem configurations of variably duplicated segments of 22q11.2 confirmed by fiber-FISH analysis. J Hum Genet; 56(11):810-2.
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