疾患概要
(研究者・医療関係者の方向け)

ステロイドスルファターゼ欠損症(STSを含むXp22.3欠失)

概要

1.概要

 ステロイドスルファターゼ欠損症は、ステロイドスルファターゼの活性不足によって引き起こされるX連鎖性の先天性魚鱗癬で、全身性角化症と皮膚の鱗屑を特徴とする。

2.原因

 Xp22.3に存在するステロイド スルファターゼ遺伝子(STS遺伝子)の不活性化変異または欠失による表皮脂質代謝異常が本疾患の原因である。STSは角層細胞間の接着に寄与する硫酸コレステロールを分解する酵素である。欠損すると硫酸コレステロールが角層細胞間に蓄積し、角層細胞の剥離が妨げられる。それにより角質が異常に厚くなり、鱗屑が引き起こされる。

3.症状

 皮膚症状は尋常性魚鱗癬よりも高度で、鱗状の鱗屑が大きく暗褐色調を呈する。半透明の薄い被膜で覆われている状態で出生することもある。四肢関節伸側ばかりでなく屈側も侵され、体幹では背部のみならず腹部も侵される。角膜に点状混濁を伴うこともある。

4.治療法

 治療は、保湿剤と、皮膚軟化剤を用いる。レチノイドの全身投与が行われることもある。冬にしばしば魚鱗癬が増悪するので注意が必要である。

5.予後

 生命予後は良好である。魚鱗癬は生涯続くが、角質増殖や鱗屑は加齢とともに改善することがある。

要件の判定に必要な事項

1.患者数

100人未満

2.発病の機構

Xp22.3に存在するステロイド スルファターゼ遺伝子(STS遺伝子)の不活性化変異または欠失による。STS遺伝子周辺には分節的重複が存在しており、コピー数変化の好発部位となっている。

3.効果的な治療方法

未確立(本質的な治療法はない。種々の合併症に対する対症療法。)

4.長期の療養

必要(症状は生涯にわたり持続する。)

5.診断基準

あり(研究班が作成した診断基準あり)

6.重症度分類

魚鱗癬重症度スコアシステム等を用いて、重症例を対象とする。

情報提供元

「マイクロアレイ染色体検査で明らかになる染色体微細構造異常症候群を示す小児から成人の診断・診療体制の構築」研究班

研究代表者 東京女子医科大学 教授 山本俊至

診断基準

Definite を対象とする。

ステロイドスルファターゼ欠損症(STSを含むXp22.3欠失)の診断基準

A.症状

【大症状】

  1. 魚鱗癬

上記の臨床症状により、ステロイドスルファターゼ欠損症を疑い、STS遺伝子を含む22番染色体に欠失を認める場合か、原因遺伝子(STS遺伝子等)に点変異を認めた場合に、ステロイドスルファターゼ欠損症の診断が確定する。欠失や変異を認めない場合には診断不能である。

【参考所見】

1.患者は男性で、男性のみに発症する家族歴がある。

2.出生時から1歳ごろまでに、全身、または、広い範囲の皮膚が厚い角質物質で覆われている。

3.皮膚病理検査にて表皮角層は肥厚しており、顆粒層は正常である。

4.血清蛋白質電気泳動、角層、白血球、線維芽細胞中のSTS活性試験で、ステロイドスルファターゼが欠損あるいは著減している。

<重症度分類>

以下に示す重症例を対象とする(詳細はさらに後述)。

1.魚鱗癬重症度スコアシステムを用いて最終スコアで判定した重症例

  • 軽症:   25 点未満
  • 中等症:  25 点以上 36 点未満
  • 重症:   36 点以上

2.細分類1のケラチン症性魚鱗癬で、水疱形成が著しく、水疱、びらんが体表面積の5%以上を占める症例、及び、細分類2の道化師様魚鱗癬の症例(出生時からほぼ全身に板状の厚い鱗屑を認め、重篤な眼瞼の外反、口唇の突出開口が見られる)の場合は、重症例とする。

3.他臓器病変併存例

皮膚以外の臓器に日常生活に支障をきたすレベルの異常がある場合(感音性難聴、視覚障害、痙性四肢麻痺、四肢の短縮、骨格異常、精神発達遅滞、重症肝障害、肝硬変)も、重症例とする。

1.魚鱗癬重症度スコアシステム

(a)鱗屑を認める範囲

範囲: A=    % (0~100%) (b)紅班を認める範囲

範囲: B=    % (0~100%)

(c)そう痒 VAS スコア(最近3日間の平均)  C=  (0~10)

0(かゆみなし)________________ 10(想像できる最高のかゆみ)

(d)皮膚の痛み VAS スコア(最近3日間の平均)  D=  (0~10)

0(痛みなし)________________ 10(想像できる最高の痛み)

(e)以下の 10 種の症状の重症度スコアの合計   E=  (以下の 10 項目のスコアの合計点; 0~60)

(1)鱗屑:体

0: なし

1: 軽度(薄い鱗屑)

3: 中等度(肉眼で見える鱗屑)

6: 重度(厚い鱗屑)

(2)鱗屑:頭

0: なし

1: 軽度(薄い鱗屑)

3: 中等度(肉眼で見える鱗屑)

6: 重度(厚い鱗屑)

 (3)掌蹠の角化

0: なし

1: 軽度(あまりはっきりしない程度)

3: 中等度(はっきりと分かる程度)

6: 重度(亀裂を伴う)

(4)紅班(最も代表的な部位)

0: なし

1: 軽度

3: 中等度

6: 重度

(5)皮膚の亀裂(掌蹠は除く)

0: なし

1: 亀裂はあるが、痛みはない(1か所のみ)。

3: 亀裂はあるが、痛みはない(数か所)。

6: 痛みを伴う亀裂がある(1か所、あるいは、数か所)。

(6)硬直:手

0: なし

1: 片手の2本の指には硬直あり。

3: 片手の全ての指に硬直あり。

6: 両手に硬直あり。

(7)硬直:足

0: なし

1: 片足の2本の趾には硬直あり。

3: 片足の全ての趾に硬直あり。

6: 両足に硬直あり。

(8)機能障害

0: なし

1: 頚部の回旋、前屈の障害

3: 内側へ湾曲した肩

6: 上肢、あるいは、下肢の機能障害(部位はどこでも良い。) (9)眼瞼

0: 眼瞼外反を認めない。

1: 上眼瞼、あるいは、下眼瞼のみの眼瞼外反がみられる。

3: 眼瞼閉鎖不全あり(瞼が閉じることができない):細い隙間が常に開いている。

6: 眼瞼閉鎖不全あり(瞼が閉じることができない):広い隙間が常に開いている。

(10)口(口角の亀裂は除く。)

0: 魚鱗癬の影響はない。

1: 軽度の口唇の突出開口(口唇の外反)を認める。

3: 特徴的な口唇の突出開口(口唇の外反)を認める。

6: 開口制限がある(口を十分に開くことが出来ない。)。

魚鱗癬重症度スコアシステム: 最終スコア=A/10 + B/10 + C + D + E =        (0~100 点)

2.水疱形成が著しい場合及び道化師様魚鱗癬の場合は、重症例とする。

  • 水疱形成が著しい場合とはケラチン症性魚鱗癬において、体表面積のおよそ5%以上に水疱形成を認める場合である。
  • 道化師様魚鱗癬は、出生時よりほぼ全身に板状の厚い鱗屑を認め、重篤な眼瞼の外反、口唇の突出開口が見られるという特徴を持つ。

3.他臓器病変併存例

以下(1)~(5)のいずれかを満たす場合を対象とする。

  • 聴覚障害:70dB以上の感音性難聴(良聴耳で判断)
  • 視覚障害:良好な方の眼の矯正視力が 0.3 未満
  • 精神発達遅滞:IQ70 未満

肝障害: Child-Pugh分類で、クラスBに該当する場合

<Child-Pugh 分類>

1点2点3点
肝性脳症なし軽度(I・II)昏睡(III 以上)
腹水なし軽度中程度以上
血清アルブミン値3.5g/dL 超2.8~3.5g/dL2.8g/dL 未満
プロトロンビン時間70%超40~70%40%未満
血清総ビリルビン値2.0mg/dL 未満2.0~3.0mg/dL3.0mg/dL 超
Child-Pugh 分類クラスChild-Pugh 合計スコア
クラス A (軽度)5~6点
クラス B (中等度)7~9点
クラス C (重度)10~15 点

(5) 四肢麻痺などの運動障害: Barthel Index で 85 点以下

機能的評価:Barthel

Index 85 点以下を対象とする。

質問内容点数
1 食事自立、自助具などの装着可、標準的時間内に食べ終える10
部分介助(例えば、おかずを切って細かくしてもらう)
全介助

2 車椅子からベッドへの移動
自立、ブレーキ、フットレストの操作も含む(歩行自立も含む)15
軽度の部分介助又は監視を要する10
座ることは可能であるがほぼ全介助
全介助又は不可能
3 整容自立(洗面、整髪、歯磨き、ひげ剃り)
部分介助又は不可能
4 トイレ動作自立(衣服の操作、後始末を含む、ポータブル便器などを使用している場合はその洗浄も含む)10
部分介助、体を支える、衣服、後始末に介助を要する 
全介助又は不可能
5 入浴自立
部分介助又は不可能
6 歩行45m以上の歩行、補装具(車椅子、歩行器は除く)の使用の有無は問わず15
45m以上の介助歩行、歩行器の使用を含む10
歩行不能の場合、車椅子にて 45m以上の操作可能
上記以外
7 階段昇降自立、手すりなどの使用の有無は問わない10
介助又は監視を要する
不能
8 着替え自立、靴、ファスナー、装具の着脱を含む10
部分介助、標準的な時間内、半分以上は自分で行える
上記以外
9 排便コントロール失禁なし、浣腸、坐薬の取り扱いも可能10
ときに失禁あり、浣腸、坐薬の取り扱いに介助を要する者も含む
上記以外
10 排尿コントロール禁なし、収尿器の取り扱いも可能10
ときに失禁あり、浣腸、坐薬の取り扱いに介助を要する者も含む
上記以外
  1. 病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
  2. 治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。

なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする

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