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筋緊張低下・シスチン尿症症候群(SLC3A1とPREPLを含む2p21微細欠失症候群)
○概要
- 概要 染色体2p21領域のホモ接合性の欠失により引き起こされる稀な症候群である。同領域内の部分欠失に伴い出生時より筋緊張低下とシスチン尿症を生じる。欠失サイズによって臨床症状の重症度が異なる。
- 原因 染色体2p21領域に存在するSLC3A1遺伝子は腎臓のアミノ酸トランスポータのサブユニットをコードしておりシスチン尿症の原因遺伝子の1つである。SLC3A1とPREPLを含む約24~100 kb領域の欠失で筋緊張低下・シスチン尿症症候群 (Hypotonia-cystinuria syndrome; MIM 606407)を発症する。それらに加えC2orf34 (CAMKMT)、PPM1Bを含む約179 kbの欠失により、より重篤な症状を示す場合、2p21微細欠失症候群と診断される。シスチン尿症以外の症候に関しては 正確な機序は解明されていない
- 症状 HCSはシスチン尿症、乳児期の筋緊張低下、摂食不良、成長ホルモン分泌不全症を特徴とする。2p21微細欠失症候群は, これらに加え新生児痙攣、血清乳酸値の上昇、運動あるいは言語における発達の遅れを来す。2p21微細欠失症候群では前頭突出、短い眼瞼裂、長い睫毛、平らな鼻堤、外耳異常などの特徴的な顔貌も指摘されている。
- 治療法 根本的な治療法はない。新生児期からしばしば重度の筋緊張低下、哺乳障害を呈するため、幼児期以降にわたって経管栄養を要することがある。運動あるいは言語における発達の遅れを呈するため、症例に応じた個別のケアが必要である。またシスチン尿症は学童期以降に尿管結石や閉塞性腎不全を来すため、同尿症に準じた健康管理が必要と考えられる。成長ホルモン分泌不全性低身長症についてはホルモン補充が行われることがある。
- 予後 年齢が進むにつれ経管栄養は脱することができるが、成長障害は遷延することがある。運動あるいは言語における発達の遅れは幼児期以降も遷延して認められる。シスチン結石により結石除去術が必要となった報告例もある。生命予後が不良であるという報告はない。
○要件の判定に必要な事項
- 患者数 HCSは, 海外の報告においても100名以内と推定される。2p21微細欠失症候群の報告例は数家系のみと考えられる。いずれも本邦での報告数は不明である。
- 発病の機構 SLC3A1遺伝子は近位尿細管及び小腸におけるアミノ酸トランスポータのサブユニットをコードしており、シスチン尿症の原因遺伝子として知られている。本症候群のその他の症候に関しては、欠失領域に併存するその他の遺伝子の影響が想定されているが、正確な機構は不明である。
- 効果的な治療方法 未確立 (根本的な治療法はない)
- 長期の療養 必要 (生涯にわたり症状が持続する)
- 診断基準 あり(研究班が作成した診断基準あり)
- 重症度分類 以下の1)~3)のいずれかに該当する者を対象とする。
- 難治性てんかんの場合。
- modified Rankin Scale(mRS)、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上の場合。
- 先天性心疾患があり、NYHA分類でII度以上に該当する場合。
○ 情報提供元
「マイクロアレイ染色体検査で明らかになる染色体微細構造異常症候群を示す小児から成人の診断・診療体制の構築」研究班
研究代表者 東京女子医科大学 教授 山本俊至
<診断基準>
Definiteを対象とする。
筋緊張低下・シスチン尿症症候群(SLC3A1とPREPLを含む2p21微細欠失症候群)の診断基準
A.症状
【大症状】 I. シスチン尿症 *Iは必須項目。 II. 新生児期からの筋緊張低下、哺乳障害 (経管栄養) III. 知的能力障害(IQ70未満)
B.検査所見
上記症状より何らかの遺伝学的検査を実施し、2番染色体短腕p21領域のホモ欠失を確認することにより確定される。ただし、欠失領域にSLC3A1遺伝子を含んでいること。
C.鑑別診断
以下の疾患を鑑別する。
他の遺伝子に起因するシスチン尿症
D.遺伝学的検査
- 染色体2p21領域のホモ欠失
<診断のカテゴリー>
Definite:Aのうち大症状のI, IIを認め、染色体2p21領域のモホ欠失を認めたもの。
<重症度分類>
以下の1)~3)のいずれかに該当する者を対象とする。
- 難治性てんかんの場合:主な抗てんかん薬2~3種類以上の単剤あるいは多剤併用で、かつ十分量で、2年以上治療しても、発作が1年以上抑制されず日常生活に支障を来す状態(日本神経学会による定義)。
- modified Rankin Scale(mRS)、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上を対象とする。
- 先天性心疾患があり、NYHA分類でII度以上に該当する場合。
●参考文献●
- Bartholdi D, et al. (2013). Further delineation of genotype-phenotype correlation in homozygous 2p21 deletion syndromes: first description of patients without cystinuria. Am J Med Genet A; 161A(8):1853-9.
- Towheed A, et al. (2021) Hypotonia-cystinuria 2p21 deletion syndrome: Intrafamilial variability of clinical expression. Ann Clin Transl Neurol; 8(11):2199-2204.
- Eggermann T, et al. (2012) 2p21 Deletions in hypotonia-cystinuria syndrome. Eur J Med Genet. 2012; 55(10):561-3.
- Parvari R, et al. (2001) A recessive contiguous gene deletion of chromosome 2p16 associated with cystinuria and a mitochondrial disease. Am J Hum Genet. 2001; 69(4):869-75.