疾患概要
(研究者・医療関係者の方向け)

BCL11AとXPO1を含む 2p15-16.1微細欠失症候群

○概要

  1. 概要 染色体2p15p16.1領域の欠失により, 主として運動および言語における発達の遅れ, 知的能力障害, 行動障害, 顔面の異形成, 小頭症などを主徴とする症候群である。現在までに50例弱の症例報告がある。
  2. 原因 染色体2p15p16.1領域の, 0.1~9.6-Mb程度に及ぶ多様なサイズの欠失により惹起されると考えられている。中でも少数の遺伝子のみを欠失している症例は, 60.5~62-Mbの間に欠失を有しており, 当該部位に含まれるBCL11A, REL, USP34, XPO1が原因遺伝子として推定されているが, 明確な疾患発症の機序は不明である。近年, BCL11A, REL, XPO1遺伝子については, 動物実験によりハプロ不全によって, 疾患と似た表現型が再現されることが実証されている。
  3. 症状 代表的な症候としては, 神経発達症, 知的能力障害, 発語の遅れ, 摂食不良, 低緊張, 小頭症, 顔面異形成(鼻根部の異常, 内眼角贅皮, 眼角隔離, 眼瞼下垂, 眼瞼裂斜下, 長い人中, 高く狭い口蓋), 手足末梢の異形成などが知られている。また, 脳梁の低形成やArnold Chiari所見といった, 中枢神経の構造異常も30%未満に認められると報告されている。
  4. 治療法 根本的な治療法はない。運動および言語における発達の遅れを呈するため, 症例に応じた個別のケアが必要である。
  5. 予後 生命予後が不良であるという報告はない。

○要件の判定に必要な事項

  1. 患者数 これまでに50例弱の症例報告がある。本邦での患者数は不明である。
  2. 発病の機構 BCL11A, REL, USP34, XPO1遺伝子のハプロ不全が原因として有力視されているが, 明確な疾患発症の機序は不明である。いずれも神経発達において機能する遺伝子であり, 中枢神経系での発現が確認されている。近年, BCL11A, REL, XPO1遺伝子については, 動物実験によりハプロ不全によって, 疾患と似た表現型が再現されることが実証されている。
  3. 効果的な治療方法 未確立 (根本的な治療法はない)
  4. 長期の療養 必要 (生涯にわたり症状が持続する)
  5. 診断基準 あり(研究班が作成した診断基準あり)
  6. 重症度分類 以下の1)~3)のいずれかに該当する者を対象とする。
    1. 難治性てんかんの場合。
    2. modified Rankin Scale(mRS)、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上の場合。
    3. 先天性心疾患があり、NYHA分類でII度以上に該当する場合。

○ 情報提供元

「マイクロアレイ染色体検査で明らかになる染色体微細構造異常症候群を示す小児から成人の診断・診療体制の構築」研究班
研究代表者 東京女子医科大学 教授 山本俊至

<診断基準>

Definiteを対象とする。
BCL11AとXPO1を含む 2p15-16.1微細欠失症候群の診断基準

A.症状

【大症状】 I. IQあるいはDQ70未満の知的能力障害ないし運動および言語における発達の遅れ(発語の遅れなど) *Iは必須項目。 II. 小頭症 III. 特徴的顔貌 (鼻根部の異常, 内眼角贅皮, 眼角隔離, 眼瞼下垂, 眼瞼裂斜下, 長い人中, 高く狭い口蓋) IV. 手指の形成異常

B.検査所見

上記症状より何らかの遺伝学的検査を実施し、BCL11A, REL, USP34, XPO1遺伝子が位置する2p15p16.1領域の欠失を確認することにより確定される。

C.鑑別診断

以下の疾患を鑑別する。
他の染色体微細構造異常による症候群

D.遺伝学的検査

  1. 染色体2p15p16.1領域の欠失

<診断のカテゴリー>

Definite:Aのうち大症状のIを認め、染色体2p15p16.1領域の欠失を認めたもの。

<重症度分類>

以下の1)~3)のいずれかに該当する者を対象とする。

  1. 難治性てんかんの場合:主な抗てんかん薬2~3種類以上の単剤あるいは多剤併用で、かつ十分量で、2年以上治療しても、発作が1年以上抑制されず日常生活に支障を来す状態(日本神経学会による定義)。
  2. modified Rankin Scale(mRS)、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上を対象とする。
  3. 先天性心疾患があり、NYHA分類でII度以上に該当する場合。

●参考文献●

  1. Bagheri H, et al. (2016) Identifying candidate genes for 2p15p16.1 microdeletion syndrome using clinical, genomic, and functional analysis. JCI Insight; 1(3):e85461.
  2. Lévy J, et al. (2017) Molecular and clinical delineation of 2p15p16.1 microdeletion syndrome. Am J Med Genet A; 173(8):2081-7.
  3. Shimojima K, et al. (2015) Characteristics of 2p15-p16.1 microdeletion syndrome: Review and description of two additional patients. Congenit Anom (Kyoto); 55(3):125-32.
  4. Liang JS, et al. (2009) A newly recognised microdeletion syndrome of 2p15-16.1 manifesting moderate developmental delay, autistic behaviour, short stature, microcephaly, and dysmorphic features: a new patient with 3.2 Mb deletion. J Med Genet; 46(9):645-647.
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