疾患概要
(患者・ご家族の方向け)

60)NKX2-1関連疾患(14q13.3欠失症候群・脳肺甲状腺症候群)

1. 「NKX2-1関連疾患(あるいは、14q13.3(じゅうよんきゅーいちさんてんいち)欠失症候群・脳肺甲状腺症候群)」とはどのような病気ですか 

NKX2-1遺伝子のバリアント(変化)により、舞踏運動、先天性甲状腺機能低下症、および新生児期の拘束性肺疾患を主な症状とする、染色体微細構造異常症候群の1つです。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

正確な患者数は分かっていません。

3. この病気はどのような人に多いのですか

性別や人種差、生活習慣とは無関係に発症する可能性があります。

4. この病気の原因はわかっているのですか

14番染色体長腕(14q13.3領域)に位置するNKX2-1遺伝子のハプロ不全(機能が失われている状態)が原因です。約80%はNKX2-1遺伝子のバリアント(変化)に起因します。

5. この病気は遺伝するのですか

常染色体顕性遺伝形式を示します。多くの患者さんは親からの遺伝で発症し、症状の程度はさまざまです。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

 約50%の患者さんに下記の主な3つの症状を認め、約30%の患者さんに神経症状と甲状腺疾患を、約13%の患者さんでは舞踏運動のみを認めます。同一家系内でも症状の差が大きく、程度はさまざまです。
1) 神経
 舞踏運動を認めます。多くは新生児期に発症しますが、小児期~成人期に発症する例もあります。症状は非進行性で生涯継続しますが、自然軽快することもあります。その他に、筋緊張低下、ミオクローヌス、ジストニア、振戦や失調症状なども報告されています。知的機能は正常です。
2) 呼吸器
 約半数で、新生児期の拘束性肺障害を認めます。若年での間質性肺疾患や肺がんの発症率が高くなるため、本症と診断された場合は、定期的な呼吸器系の検査(肺機能検査、X線写真や胸部CTなどの画像検査)が推奨されます。
3) 甲状腺
 約2/3の患者は、先天性甲状腺機能低下症と診断されます。新生児マススクリーニング検査で甲状腺機能低下症を指摘されることがありますが、無症候性の甲状腺機能低下を呈する場合もあります。新生児時期に異常がなくても、定期的な甲状腺機能検査が推奨されます。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

現時点では、根本的な治療法は確立していません。対症療法が中心となります。患者さんによって症状が異なるため、それぞれの症状に合わせた治療が必要となり、包括的な健康管理が望まれます。専門家の指導のもとで継続的なケアを受けることが重要です。
1) 神経症状:舞踏運動などの神経症状に対してテトラベナジン、バルベナジン、レボドパなどの薬物治療が用いられます。
2) 呼吸器症状:呼吸状態に応じた治療を行います。人工呼吸器管理などの呼吸サポートが必要となることもあります。
3) 甲状腺機能障害:甲状腺機能低下症に対しては、甲状腺ホルモンの補充療法を行います。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

舞踏運動は非進行性で、生涯にわたって継続しますが、一部の患者さんでは自然軽快する場合もあります。拘束性肺機能障害や間質性肺疾患に対しては、継続した治療が必要となります。呼吸器症状の程度により、生命予後が異なります。症状に応じた適切な治療や支援を受けることで、生活の質の改善が期待されます。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

特別な注意は必要ありませんが、症状や合併症に応じた注意が必要です。

10. この病気に関する資料・関連リンク

詳細な情報やサポートを求める際は、信頼性のある医療機関のウェブサイトや関連する団体の情報を参考にすることが重要です。遺伝医療の専門医や専門の医療チームと相談することで、より詳しい情報を得ることができます。

●参考文献●

  1. Patel NJ, Jankovic J. NKX2-1-Related Disorders. 2014 Feb 20 [Updated 2023 Jun 29]. In: Adam MP, Feldman J, Mirzaa GM, et al., editors. GeneReviews® [Internet]. Seattle (WA): University of Washington, Seattle; 1993-2024. Available from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK185066/
  2. Machida O, Sakamoto H, Yamamoto KS, Hasegawa Y, Nii S, Okada H, Nishikawa K, Sumimoto SI, Nishi E, Okamoto N, Yamamoto T. Haploinsufficiency of NKX2-1 is likely to contribute to developmental delay involving 14q13 microdeletions. Intractable Rare Dis Res. 2024 Feb;13(1):36-41. doi: 10.5582/irdr.2023.01119. PMID: 38404736; PMCID: PMC10883847.
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