疾患概要
(研究者・医療関係者の方向け)

15q13.3反復微細欠失症候群

概要

1. 概要

 15番染色体長腕15q13.3領域の欠失によっておこる染色体微細構造異常症候群である。知的能力障害、てんかん、自閉症スペクトラム、統合失調症などをきたす。

2. 原因

 先天的な要因による15番染色体長腕15q13.3の欠失が原因である。15%は単独で突然変異で発症し、85%は顕性遺伝で両親のうちの一方からの遺伝(母由来が多い)で発症する。ただし、欠失を有していても症状を呈さない人も存在する。正常コントロールで0.02%が同欠失を有する。欠失の両端に存在する分節的な領域の間で生じる非アリル間相同染色体組換が原因と考えられており、欠失断端は共通している。

3. 症状

知的能力障害(58%)、言語発達遅滞、けいれん(28%)、自閉症スペクトラム(11%)、統合失調症(11%)、気分障害(10%)などで、全体の浸透率は80%である。知的能力障害は過半数で見られ、多くは軽度であるが、中等度から重度の知的能力障害を呈する人もいる。てんかんは、若年性ミオクロニー発作、欠神発作、若年性欠神発作などがある。心臓の形態異常が2.4%で見られる。ファロ-四徴症、心房心室中隔欠損症、大動脈縮窄、左心低形成、弁膜症などを示す。顔貌は明らかな特徴ではないが、わずかな顔貌的特徴(眼間開離、眼瞼裂斜上、目立ってしばしば短い人中と口唇反転)、指の形態異常(短く、カーブしている第5指、短い第4趾の中手骨)の報告がある。

4. 治療法

発達の遅れや神経発達症の罹患率が高いため、発達評価や治療の介入のための経過観察は推奨される。症状や年齢に応じて、各々対応した治療が必要である。症状がない場合は、基本的にfollowは必要ないが、統合失調症等の後期のリスクを把握しておくことは有効である。また、無症状な人も含めて遺伝学的診断に基づく遺伝カウンセリングが欠かせない。

5. 予後

 知的能力障害の重症度や、てんかん、心疾患の有無による。てんかんは約1/4が発症するが、年齢は乳児期から40台まで幅がある。難治例の報告は、比較的少ない。

要件の判定に必要な事項

1. 患者数

不明である。

2. 発病の機構

 非アリル間相同染色体組換が原因と想定されるが、突然変異は15%とされており、無症状の血縁者と共有している場合があり、浸透率が低い。

3. 効果的な治療方法

 未確立 (根本的な治療法はない)

4. 長期の療養

 必要 (生涯にわたり症状が持続する)

5. 診断基準

あり(研究班が作成した診断基準あり)

6.  重症度分類

以下の1)~3)のいずれかに該当する者を対象とする。

  • 難治性てんかんの場合。
  • modified Rankin Scale(mRS)、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上の場合。
  • 先天性心疾患があり、NYHA分類でII度以上に該当する場合。

情報提供元

「マイクロアレイ染色体検査で明らかになる染色体微細構造異常症候群を示す小児から成人の診断・診療体制の構築」研究班

研究代表者 東京女子医科大学 教授 山本俊至

診断基準

Definiteを対象とする。

15q13.3反復微細欠失症候群の診断基準

A.症状

【大症状】

  1. 知的能力障害(IQ 70未満)
  2. 言語発達遅滞
  3. てんかん
  4. 自閉症スペクトラム
  5. 統合失調症
  6. 気分障害(注意欠陥多動性障害、気分障害、攻撃的and/or衝動的な行動など)

*Iは必須項目。

【小症状】(合併しうる症状)

  1. 心疾患
  2. 顔貌(眼間開離、眼瞼裂斜上、目立ってしばしば短い人中と口唇反転)
  3. 手指の形態異常(短く、カーブしている第5指、短い第4趾の中手骨)
  4. 生殖期の形態異常(大きい陰茎、ショール陰嚢)
  5. 滲出性中耳炎による一時的な難聴
  6. 斜視および視力調節障害、小眼、コロボーマなど
  7. 歯並びの異常

B.検査所見

上記症状よりマイクロアレイ染色体検査を含む何らかの遺伝学的検査を実施し、15番染色体長腕q13.3領域(31.0-32.5 Mb)の約1.5-Mbの欠失を確認することにより確定される。ただし、CHRNA7OUTD7Aの両方あるいは一方が欠失に含まれていること。

C.鑑別診断

以下の疾患を鑑別する。

他の染色体微細構造異常による症候群

D.遺伝学的検査

1.染色体15q13.3領域の欠失

<診断のカテゴリー>

Definite:AのIを認め、染色体15q13.3領域の欠失を認めたもの。

Possible:遺伝学的検査結果が合致しても、症状を満たさない場合。

<重症度分類>

1)~3)のいずれかに該当する者を対象とする。

  • 難治性てんかんの場合:主な抗てんかん薬2~3種類以上の単剤あるいは多剤併用で、かつ十分量で、2年以上治療しても、発作が1年以上抑制されず日常生活に支障を来す状態(日本神経学会による定義)。
  • modified Rankin Scale(mRS)、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上を対象とする。
  • 先天性心疾患があり、NYHA分類でII度以上に該当する場合。

●参考文献●

  1. van Bon BWM, et al. (2010) 15q13.3 Microdeletion. In: Adam MP, Everman DB, Mirzaa GM, et al., eds. GeneReviews®. Seattle (WA): University of Washington, Seattle; December 23.
  2. van Bon BW, et al. (2009) Further delineation of the 15q13 microdeletion and duplication syndromes: a clinical spectrum varying from non-pathogenic to a severe outcome. J Med Genet; 46(8):511-23.
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