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RCAD症候群(HNF1Bを含む17q12欠失症候群)
概要
1. 概要
Renal cysts and diabetes syndrome(RCAD症候群[腎嚢胞及び糖尿病症候群];MIM# 137920)は、HNF1B遺伝子の変異によって生じる常染色体顕性(優性)遺伝性疾患であり、若年成人発症の糖尿病(maturity-onset diabetes of the young; MODY)に加え、腎嚢胞などの腎臓の異常を示すことがある。常染色体顕性(優性)尿細管間質性腎疾患(autosomal dominant polycystic kidney disease: ADPKD)の1つである先天成人尿路奇形(congenital anomalies of the kidney and urinary tract: CAKUT)の原因となることもある。
2. 原因
染色体17q12に存在するHNF1B遺伝子のヘテロ接合性変異や片アリル欠失によって発症する。HNF1B遺伝子によってコードされるHNF1βは、HNF1αとホモあるいはヘテロ二量体を形成し、膵臓のβ細胞の発生、腎臓でのネフロン形成に関与する。また、肝臓、胆管、泌尿生殖器の遺伝子発現の組織特異的な調節に重要な役割を果たす。
3. 症状
嚢胞性腎疾患が特徴的であるが、それ以外に片側性腎欠失、腎低形成、女性生殖器における双角子宮や重複子宮を認めることがある。慢性腎不全は一般に緩徐に進行するが、一部の乳児では腎不全末期の初期症状を示す。学童期、青年期、若年成人期にかけて、糖尿病、低マグネシウム血症、高尿酸血症、肝酵素上昇が出現してくる。
4. 治療法
腎機能障害に対しての管理が行われ、腎機能低下の程度によっては人工透析や腎移植も検討される。糖尿病に関しては、糖尿病治療薬が必要だが、インスリンの投与も考慮される。
5. 予後
腎臓に関しては、10年および 20 年のフォローアップでの累積腎臓生存率は、それぞれ 約80%および50% であった。糖尿病に関しては、50%の患者で糖尿病を引き起こし、そのほとんどでインスリンが必要となる。
○要件の判定に必要な事項
1. 患者数
本邦での正確な患者数は不明である。
2. 発病の機構
親世代からの常染色体顕性(優性)遺伝による場合と、生殖細胞系列における突然変異によって生じる場合がある。染色体微細欠失は、分節的重複(LCR)を介した非対立遺伝子相同組み換え(NAHR)を介し惹起されるため、患者間で共通した欠失サイズを示す。
3. 効果的な治療方法
糖尿病や腎障害についてはそれぞれの治療ガイドラインに沿って行う (根本的な治療法はない)。
4. 長期の療養
必要 (生涯にわたり症状が持続する)
5. 診断基準
あり(研究班が作成した診断基準あり)
6. 重症度分類
以下の1)~3)のいずれかに該当する者を対象とする。
- modified Rankin Scale(mRS)、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上の場合。
- 腎障害疾患があり、NYHA分類でII度以上に該当する場合。
<診断基準>
Definiteを対象とする。
RCAD症候群(HNF1Bを含む17q12欠失症候群)の診断基準
A.症状
【大症状】 I. 糖尿病 II. 腎嚢胞を含む腎尿路系異常 【小症状】 I. 25歳までに糖尿病の診断を受けている。 II. 糖尿病の家族歴がある(同胞の約半数に糖尿病を認め、少なくとも3世代にわたって存在する)。 III. 膵島関連自己抗体は、陰性である。 IV. 腎疾患の既往歴または家族歴がある(腎嚢胞や腎異形成)。
B.検査所見
上記症状より何らかの遺伝学的検査を実施し、HNF1B の有害変異、もしくはHNF1B を含む17q12のヘテロ欠失を確認することにより確定される。
C.鑑別診断
以下の疾患を鑑別する。
他の遺伝子に関連した糖尿病・腎障害
D.遺伝学的検査
- 染色体17q12領域の欠失
<診断のカテゴリー>
Definite:Aのうち大症状のI, IIを認め、HNF1B を含む染色体17q12領域の欠失を認めたもの。
<重症度分類>
1)に該当する者を対象とする。
- modified Rankin Scale(mRS)、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上を対象とする。
●参考文献●
Palumbo P, Antona V, Palumbo O, et al. Variable phenotype in 17q12 microdeletions: clinical and molecular characterization of a new case. Gene. 2014;538(2):373-378. doi:10.1016/j.gene.2014.01.050
HNF1Bスコアが提唱されている。
表 HNF1Bスコア:合計8点以上で遺伝子解析が勧められる
| 症状 | 点数 |
|---|---|
| 家族歴 | 2 |
| 胎児期腎形態異常 | 2 |
| 腎尿路 | |
| 左腎 腎エコー輝度上昇 | 4 |
| 嚢胞 | 4 |
| 低形成 | 2 |
| MCDK | 2 |
| 尿路異常 | 1 |
| 片腎 | 1 |
| 右腎 腎エコー輝度上昇 | 4 |
| 嚢胞 | 4 |
| 低形成 | 2 |
| MCDK | 2 |
| 尿路異常 | 1 |
| 片腎 | 1 |
| 電解質・尿酸異常 | |
| 低マグネシウム血症 | 2 |
| 低カリウム血症 | 1 |
| 若年発症高尿酸血症 | 2 |
| 腎病理 オリゴメガネフロニアまたは糸球体嚢胞 | 1 |
| 膵臓 MODY または膵臓形態異常または膵臓外分泌機能異常 | 4 |
| 生殖器異常 重複子宮,単角子宮,膣閉鎖,精巣上体嚢胞,輸精管欠損 | 4 |
| 肝臓 無症候性肝酵素上昇 | 2 |
<重症度分類>
以下のいずれかを満たす場合を対象とする。
A.CKD 重症度分類ヒートマップが赤の部分の場合
B.腎容積 750mL 以上かつ腎容積増大速度5%/年以上
CKD 重症度分類ヒートマップ
| GFR 区分 (mL/分 /1.73 ㎡) | 蛋白尿区分 | |||
|---|---|---|---|---|
| A1 正常 | A2 軽度蛋白尿 | A3 高度蛋白尿 | ||
| 尿蛋白定量 (g/日) 尿蛋白/Cr 比 (g/gCr) | 0.15 未満 | 0.15~0.49 | 0.50 以上 | |
| G1 正常又は高値 | ≧90 | 緑 | 黄 | オレンジ |
| G2 正常又は軽度低下 | 60~89 | 緑 | 黄 | オレンジ |
| G3a 軽度~中等度低下 | 45~59 | 黄 | オレンジ | 赤 |
| G3b 中等度~高度低下 | 30~44 | オレンジ | 赤 | 赤 |
| G4 高度低下 | 15~29 | 赤 | 赤 | 赤 |
| G5 末期腎不全 (ESKD) | <15 | 赤 | 赤 | 赤 |
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
- 病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
- 治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
- なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。